【連載小説】『放課後クライマックスガールズ』に虐められたい。
それは、僕がおやつのどら焼きを買って帰ろうとした時のことでした。
「げっ……。『放課後クライマックスガールズ』だ……」
『放課後クライマックスガールズ』とは、学校でいつも僕のことを虐める悪い奴らのことです。
運悪く、僕は彼女らがたむろしていたコンビニの前を通ってしまったのです。
(目…、目を合わせないようにしてさっさと通過しないと……。僕は透明、僕は透明……)
「あら、ポンコツ。そんなに急いで一体どうしたのかしら? こっち来なさい」
ひっ…!
バレてしまいました。(「ポンコツ」は彼女達が決めた僕の渾名です)
最悪なことに、リーダー格の夏葉さんに声をかけられてしまいました。
ここで無視して逃げ帰ったら、明日からイジメがエスカレートするに違いありません。ここは男らしく、きっぱりとNOを言わないと…。
大丈夫だ、僕…。
息を大きく吸い込んで…。いくぞ……!
「あ、あの……、すみません。今日はこの後用事があるので……。このまま帰してくれると、嬉しいかなぁ、なんて……」
「うるせぇ! さっさと金を出してくださいっ!」
ボゴォッ‼︎
ひっ、ひぃいぃぃっ!
やっ、やめてっ! すぐにお金払いますからっ! もう殴らないでっ…! 顔にアザとかコブが出来たらママに虐められてることバレちゃうぅぅ…!
「テメーの予定なんて家帰ってシコるだけだろーが。嘘ついて果穂の手煩わせるようなら容赦しねーぞ?」
メンバーの中でも特に喧嘩っ早い果穂さんに顔面を殴られ、そして樹里さんに脅されて、僕は泣く泣く財布に入っていた3万円を手渡しました。うぅ…、怖いよママ……。このお金でレムのフィギュアを買う予定だったのに……。
「ん? 何か不満でもあるの?」
ジュッ
グリグリグリグリッ
ひぃいいぃぃいいっ! 熱いぃいいぃいぃっ! 痛いぃいいいっ!
なっ、何にもありませんんんんっ! 皆さんにお金をお渡し出来て、僕、とっても幸せですうぅぅうっ!
「なら良し」
馬鹿な僕は不満そうな顔を見せてしまったばっかりに、学園1のサイコパスとして有名な園田先輩に目蓋をタバコの火で焼かれてしまいました。これで先輩に付けられた根性焼きの跡は8つ目です……。
「なんかこいつ……、調子に乗っているようでございますね……」
え。
い、いえいえ、滅相もございませんっ! ちょ、調子になんて乗っていません! そ、そうだ! 家からっ、家からお金盗ってきますからっ! それで許してくださいっ! (猛烈アスファルト額擦り付け土下座)
「はい? 貴方、親の財布からお金をくすねるつもり?」
「そんなのサイテーですっ!」
「やっぱこいつ調子に乗ってるぜ」
「そういえば、私試してみたいプロレス技があるんだよね」
「いいですね。それでは、早速試してみましょう」
「それじゃあ、せーのでこの土下座してるバカに飛びかかるわよっ!」
「「「「「せーのっ‼︎」」」」」
ぷちゅんっ(金玉を潰される音)
おしまい。